日本の「失われた30年」を考える
ニュースや経済番組では、よく「日本の失われた30年」という言葉が取り上げられます。
バブル崩壊後、日本経済は長期間にわたり成長が停滞しました。その原因については、政治の責任、企業経営の問題、人口減少など、さまざまな意見があります。
私自身、社会保険労務士として企業の労務に関わる中で感じることがあります。
この問題は、決して政治だけが原因ではないのではないかということです。
例えば、1990年代以降、労働市場では規制緩和が進み、派遣労働の対象範囲が広がりました。その結果、多様な働き方が生まれた一方で、非正規雇用が社会に定着し、安定した収入を得ることが難しい人も増えました。
働く人の所得が伸び悩む一方で、物価は上昇しています。過去と現在を比較すると、若い世代ほど経済的な余裕を持ちにくい環境になっていることを感じます。
また、企業側にも課題があったように思います。
将来への不安から利益を内部に蓄えることを重視し、賃金への還元が十分に進まなかった企業も少なくありません。もちろん、企業が生き残るための判断だった面もありますが、その積み重ねが消費の低迷につながった部分もあるのではないでしょうか。
さらに、日本企業の大きな特徴である中小企業の多さについても考える必要があります。
中小企業は日本経済を支える大切な存在です。一方で、家族経営的な企業も多く、会社の成長よりも組織内部の維持を優先してしまうケースもあります。
長年続いてきた「身内を大切にする文化」は、日本社会の良さでもあります。しかし、時代の変化に合わせて、能力や成果をより公平に評価する仕組みへ変化していくことも必要なのかもしれません。
歴史を振り返ると、かつて中国の三国時代に存在した呉の国も、内部の安定を重視するあまり、時代の変化への対応が遅れたと言われています。
もちろん、日本と呉を単純に比較することはできません。しかし、外部環境が大きく変化する時代において、過去の成功体験や慣れ親しんだ仕組みに頼り続けることの危険性は、共通する部分があるように感じます。
そして、もう一つ考えたいのは、日本人の「我慢強さ」です。
協調性や規律を重んじる文化は、日本の大きな強みです。しかし、一方で「仕方がない」「昔からこうだから」と変化を受け入れることを避けてしまう面もあるのではないでしょうか。
社会を変えるには、政治や企業だけではなく、働く人一人ひとりの意識も関係しています。
失われた30年を誰か一人の責任にするのではなく、社会全体で何を変えるべきだったのか、そしてこれから何を変えていくべきなのかを考えることが大切なのではないでしょうか。
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